【専門家が解説】リースバックの普通賃貸借と定期賃貸借どちらを選ぶべき?

自宅を売却してそのまま住み続けることが出来るリースバック。

リースバックには、賃貸として住むことの出来る期間の違いで「普通賃貸借契約」タイプと「定期賃貸借契約」タイプに分けることが出来ます。

普通賃貸借契約と定期賃貸借契約ではリースバックの条件も変わるため、どちらのタイプでリースバックを検討するかは非常に重要です。

今回は、リースバック取引を中心に現役で活動している筆者がリースバックにおける普通賃貸借契約と定期賃貸借契約の違いについて出来るだけ分かり易く解説します。

この授業を受けることで
  • リースバックにおける普通賃貸借契約と定期賃貸借契約の違いが分かります
  • 普通賃貸借契約にした方が良い場合、定期賃貸借契約にした方が良い場合について理解できます

本授業のレベルsection

検討度
初心者
上級者
難易度
易しい
難しい
重要度

リースバックの普通賃貸借契約定期賃貸借契約を考える際はどのような点に注意するのでしょうか?

将来の引越し計画があるかどうか」で判断する。
まずは2つの賃貸借契約の違いから解説していくぞ

間違った認識でリースバック取引をしないためにも、普通賃貸借契約と定期賃貸借の違いはしっかり理解しておきたいですね

もくじ

普通賃貸借と定期賃貸借契約どちらが良いの?

リースバックでは普通借家契約と定期賃貸借契約どちらが良いものという訳ではなく、検討する人の必要性に応じて判断をする必要があります。

どちらかを選ぶ上で判断基準となるのが、将来の引越しの計画の有無です。

引越しの計画がなければ「普通賃貸借契約」

リースバック後に引越しする計画がなく、今の自宅に住み続けたい場合は、普通賃貸借契約を選びましょう。

普通借家契約は契約期間はありますが、更新し続けることができる契約のため、将来引越しの予定がない場合でも安心して住み続けることが出来ます。

長期的に住み続けることを前提に普通借家契約でリースバックを検討する場合は、家賃設定が重要となります。

例えば、月々2万円の家賃の差があれば10年で240万円もの違いになります。

普通賃貸借契約で出来るだけ家賃を抑えられる会社選びをしましょう。

現在、事業者が提供してる商品の多くが定期借家契約でのリースバックとなっており、普通借家契約を提供している会社は少数となっています。
※株式会社価値総合研究所調べ(令和2年10月~11月)

賃貸借契約について(契約形態と賃料査定)※リースバック業者15社が回答
普通借家契約
20.0%
定期借家契約
80.0%
その他
13.3%
無回答
6.7%

株式会社価値総合研究所調べ(令和2年10月~11月)

将来引越しをするか不確定な場合でも、普通賃貸借契約を選んでおけばいつでも以下の選択肢の中から都合の良い方を選ぶことが出来ます。

  1. 住み続ける。
  2. 引越しをする。

普通賃貸借契約が選ばれるケース

以下のような場合に、普通借家契約のリースバックが選ばれることが多くなっています。

定年後に住宅ローンの支払いが残っており、リースバックで一括返済を考えている

現在の住宅ローンの毎月の負担を抑えたくて、リースバックを検討している

子供が小学校・中学校に通っておりすぐに転校が難しい

離婚で相手方が現在の自宅に住み続ける

引越しの予定が有る場合は「定期借家契約」

引越しの計画が明確にあり、3年や5年と住みたい年数も決まっている場合は、定期借家契約がおすすめです。

理由としては以下の2点があります。

家賃を「安く」できる。
・売買金額が「高く」なる。

出来る限り高額買取・低家賃でリースバック取引をしたい場合は、普通賃貸借契約よりも定期賃貸借契約の方が条件が有利となります。

理由は、リースバック事業者は所有する期間が短い方が好条件を提示できるから。

リースバック事業者は所有する期間が長期になると、将来の不動産価格の変動リスクや収益性を考える必要があるため、売買金額が低くなったり、家賃が高くなる傾向があります。

短期の定期借家契約の場合は、保有するリスクや収益性を考慮する必要性が低いため、売買金額・家賃が好条件となり易いのです。

定期借家契約のリースバックを選ぶと、引越しの予定がなくなったとしても、契約期限の満了で退去が必要となるため注意が必要です。

定期賃貸借契約がおすすめなケース

  • 現在建設中のマンション(一戸建て)に引越しが決まっている。
  • 高齢者施設への入居を考えていて3年以内には移る計画。
  • 経営者で一時的に事業資金が必要で、契約期限内に買戻しを考えている。

普通賃貸借契約と定期賃貸借の違いは以下になります

普通賃貸借契約定期賃貸借契約
売買金額
家賃
賃貸期間無(長期で住める)有(短期間が多い)
取扱会社少ない多い

ここからは普通賃貸借契約と定期賃貸借契約の詳細について解説するぞ。より深い知りたい人は見てほしい

普通賃貸借契約とは・・

一般的な賃貸借契約

「普通賃貸借契約」は賃貸アパートや賃貸マンションを借りる際に、利用される一般的な契約形態です。

東京都内の賃貸アパートにおける50㎡~70㎡の普通賃貸借契約の割合は97.1%となっています。
アットホーム株式会社の「定期借家物件」の募集家賃同動向(2020年度)

普通に家を借りる場合は、ほとんどが普通賃貸借契約なんですね

住み続けることを前提とした契約

契約書上は契約期間を記載しますが、期間が過ぎても更新することで継続して住むことができます。

普通賃貸借契約は契約更新が可能な契約方法です。

契約後は借主側から解約の手続きをするまでは、同条件にて更新し続けることが可能です。

普通賃貸借契約では、借主が物件を使い続けることを希望する場合、貸主側から中途解約や契約期間満了を理由に更新の拒絶をすることは基本的には出来ません

賃貸借契約の更新は、同一の期間で行われることが多くなっています。

例えば、普通借家契約で2年間の契約をした場合、更新すると従前の契約期間を同条件でさらに2年、契約期間を更新し続けることが出来ます。

契約の更新には、2つのパターンがあります。

自動更新
更新手続き

自動更新

地域によっても異なりますが、最近では普通賃貸借契約の更新は自動更新も増えてきています

賃貸借期間が1年以上の普通借家契約の場合、期間満了の6ヵ月前までの間に、相手側に契約の更新をしない旨を通知しなかった時は、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます※借地借家法第26条第1項。

自動更新の場合は、賃貸借契約書に「当事者が、期間満了6ケ月前までに相手方に対し書面により更新しない旨の通知する場合を除き、本契約は期間満了日の翌日より同一の条件で更新されるものとする」といった自動更新の文言が入ってることが多くなっています。

「自動更新の内容については、予め決めておきましょうね」ということですね。

ちなみに、貸主から契約期間満了6カ月前に解約の予告があったとしても、賃借人としての権利は借地借家法で守られているため、基本的は借主は退去に応じる必要はないぞ

更新手続き

貸主・借主がお互い書面で合意して更新することから合意更新とも呼ばれます。契約期間が終わるタイミングで、更新手続きを行います。

更新料

更新料が発生するかどうかは、地域よって異なります

関東地方では賃貸マンションやアパートで更新料が支払われることが一般的ですが、関西や九州では更新料を設定しない契約の方が多くなっています。

更新料を設定するかどうかは、貸主・借主間の契約で決めるため、同地域でも更新料の有無や設定金額が違う場合があります。

更新料が設定される場合、家賃の1カ月分以内とすることが多くなっています。

普通賃貸借契約のリースバックの場合は、更新料が発生するかどうかは事前に確認した方がよいだろう

契約期間は2年が一般的

普通賃貸借契約の契約期間は、1年以上で設定する必要があり、一般的には2年とすることが多くなっています。

普通賃貸借契約で1年未満の契約、期間の定めのない賃貸借契約とみなされますが、ほとんど使われることがないためここでの解説は省略します。

契約期限内の途中解約について

契約期限内の借主側からの途中解約については、以下のような特約を契約書上で定めていれば可能です。

契約書途中解約の特約参考文

  • 借主は本契約期間内であっても、1ヶ月前までに解約の申入れを行うことにより、本契約を解約できる。

2年の普通賃貸借契約をした場合でも、中途解約の文言があれば、2年間は絶対に住まなくてはいけないということではありません

リースバックをする場合でも、上記のような途中解約の文言が入っているか確認した方が良いでしょう。

中途解約の文言って大事なんですね!

一方、貸主から中途解約や更新の拒絶をしたい場合には、貸主がその物件を自ら使用しなければならなくなったという「正当事由」が必要です。

正当事由とは貸主が自己で賃貸中の物件使用する必要性が有る場合に認められますが、リースバックの場合、貸主が不動産会社等の法人となるため、正当事由が認められる可能性は低くなります。

解約金について

賃貸借契約期間の中途解約に関する特約文言が無かった場合には、期間内の賃貸解約時に違約金を請求される場合があります。

違約金の額は家賃の1カ月が相場とされていますが、契約の内容によって異なります。中には契約期間の残りの契約期間についての家賃相当額を違約金とする契約もあります。

過去の裁判では、賃貸借期間を4年とした契約で、特約として「賃借人が期間満了前に解約する場合には、解約予告日の翌日から期間満了日までの賃料・共益費相当額を違約金として支払う」との条項を設けたものについて、賃借人が契約締結後10か月で賃貸借契約を解約し解約金について争われた事例があります。

裁判所は、賃料等の約3年2か月分を違約金として請求できるとする条項は、賃借人の解約の自由を極端に制約することになるから、その効力を全面的に認めることはできないと判示し、この特約は、賃借人が明渡しをした日の翌日から1年分の賃料・共益費相当額の限度で有効と解し、残りの部分は公序良俗違反として無効としました。東京地裁平成8年8月22日判決

引用 https://www.zennichi.or.jp/law_faq/契約期間内の解約と残存期間の賃料の没収/

1年分の家賃は違約金としては大きいですね!

このような事例は多くはないが、契約期間前の解約には解約金が発生するかは調べておいて方が良いだろう

リースバックの場合は、賃借人が退去した後に不動産は売却することを想定している会社が多く、早期に退去してもリースバック会社にとっては損害がないため、違約金を請求する会社は少なくなっています。

賃貸人からの退去要請には応じなくてもいい

貸主は正当な事由があれば、立退決定後最大6ヶ月までの間に立退をしてもらうことが可能で、貸主側は立退料を6ヶ月分支払って、早めに立退してもらえるよう促す場合もあります。

但し、立退料を支払うこと自体が正当事由になる訳ではないので、リースバック後の貸主からの立ち退きは事実上難しくなっています。

正当事由とは・・・

  1. 貸主がその住まいを必要とする必要性
  2. 家賃滞納等により借主への信頼関係が損なわれた
  3. 物件が老朽化してきたため危険性がある

リースバック後に立ち退きに関して貸主側の正当事由が認められるとすれば、②番の家賃滞納が挙げられます。

家賃滞納が3か月以上となり、支払いの意思がないと判断された場合は貸主側から一方的に賃貸借契約が解除されることもあるため注意が必要です。

普通借家契約のメリット・デメリット

メリット
デメリット
  • 契約の更新が可能
  • 住み続けることができる
  • 特約があれば期限内でも解約可能
  • 家賃滞納等をしなければ退去を求められても応じる必要がない
  • 契約更新料がかかる場合がある

定期賃貸借契約とは・・

原則更新不可の賃貸借契約

「定期借家契約」は、原則更新が出来ない賃貸借契約

契約期間については、双方合意のもと決めることになります。

期間満了により賃貸借契約が終了し、賃借人は退去が必要となります。貸主との合意で更新となった場合は、新たに再契約をする場合もあります。

定期借家契約は、期間満了により貸主側から確実に契約を終了させることが出来る契約だ

一般的に定期借家契約が使われるケース

大阪で購入した分譲マンションに家族で暮らしていたAさんご家族

数年前に大阪で分譲マンションを購入して家族で住んでいたAさんは、ある日東京への転勤の辞令が言い渡されました。

3年後には大阪に戻ってくる話になっているので、戻ってきたらまた今のマンションに住みたいと考えています。

転勤期間中、ローンを支払いながらマンションを空家にしておくのは勿体ないので、賃貸として貸すことを希望しています。

普通賃貸借契約の場合は、大阪に戻ってくる時に賃借人が退去させられるかが分からないため、賃料が多少低くても3年間限定で定期賃貸借契約で貸し出したいと考えています。

定期借家契約制度が出来た背景

昔は賃借人の立場が弱かった

借地借家方が施行される前は、借主は「店子(たなこ)」と言われ貸主より立場が弱いとされていました。

そのため、借主の弱い立場を利用して、家賃の値上げや一方的な退去勧告等が行われていました。

このような背景から、借主の権利を守るために、1992年(平成4年)8月1日に借地借家法が施行されました。

今度は賃借人立場が強くなりすぎた

借地借家方法の施行により、普通借家契約における借主保護の考えが強くなり、貸主から正当事由のない退去や賃料値上げ等が簡単に出来なくなりました。

普通借家契約では、借主は「住み続ける権利」が守られているため、契約を更新することで長期的に住み続けることができます。

貸主は、一度賃貸に貸し出すと借主に何年も住み続けられることになり、自分が必要とする場合でも住めない可能性があります。

これでは、自分の自宅を賃貸に出すことに所有者が消極的になってしまいます。

そのため、平成12年3月に借地借家法が改正され、契約期間終了と同時に賃貸契約を終了させることができる「定期借家制度」生まれました。

定期賃貸賃貸借契約は「良質な賃貸住宅などの供給の促進に関する特別措置法」に基づいて、期間限定で自宅を賃貸に出せることを目的として導入された制度です。

家賃は低くなる場合が多い

契約期限があることから、相場より家賃が低くなることが多くなっています。

契約期間にもよりますが、一般的には相場の50~80%程度に設定されることが多くなっています。

定期借家契約は分譲マンションや一戸建てなど良質な住宅に多く、都内の70㎡以上の賃貸マンションの25%以上が定期借家契約となっています
※アットホーム株式会社の「定期借家物件」の募集家賃同動向(2020年度)

リースバックの場合でも、定期賃貸借の方が家賃が低くなることが多いぞ

定期借家契約は署名が必要

定期借家契約は公正証書などの書面によって契約することが必要となります。

定期借家契約書の他に定期建物賃貸借についての説明(借地借家法38条3項書面とも呼びます)という書類が必要となります。

期限満了前の6ヵ月前までに通知が必要

契約期間が1年以上の場合、貸主は期間満了の1年~6か月前までの間に、借主に対して契約終了の通知をする必要があります。

貸主が契約終了の通知を忘れていた場合、通知から6か月後でなければ明け渡しを求めることができません。

当初の契約期間終了後になっても契約終了の通知を忘れていた場合は、明け渡しが出来ない場合もあります。

定期借家契約のメリット・デメリット

メリット
デメリット
  • 短期の賃貸借契約の場合は普通借家契約と比べて家賃が安い
  • 契約期間を自由に決められる
  • 良質な物件に住むことができる
  • 床面積200㎡未満の建物であれば、やむを得ない事情が生じた場合に限り中途解約の申し入れが可能
  • 契約期間満了後は退去する必要がある

普通借家契約と定期賃貸借契約の比較

普通賃貸借契約定期賃貸借契約
契約方法口頭で可能必ず書面
家賃相場並み相場より安い
契約期間1年以上制限なし
更新の有無原則不可
更新料居住エリアによる再契約する場合は有
借主からの中途解約原則不可
※特約があれば可能
床面積が200㎡未満の物件を使用している際に限り、やむを得ない理由での解約が申請可能。
貸主からの中途解約原則不可原則不可
貸主からの契約終了通知貸主からの一方的な解約不可契約終了の6カ月前に必要

まとめ

普通賃貸借と定期賃貸借契約、どちらを選ぶべきかの基準は繰り返しになりますが、以下の通りです

  • リースバック後に引越しの計画がなければ、普通賃貸借契約
  • リースバック後に引越しの計画があるなら、定期賃貸借契約

普通賃貸借契約と定期賃貸借契約では、以下のようにリースバック時の売買金額・家賃等の条件に差があります。

スクロールできます
普通賃貸借契約定期賃貸借契約
売買金額
家賃
賃貸期限
取扱会社少ない多い

例えば、3年後に引越しが決まっているのあれば、定期借家契約に強い会社を中心にリースバック会社選びをした方が売買価格・家賃等を好条件で取引することが出来ます。

定期借家契約や普通借家契約について、「どの会社が良いか、調べるのが面倒くさい!」という方は以下の授業も参考なりますよ

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もくじ